妻は高校英語教師。

高校英語教師として働く妻の日常を書きます。

小学校の「英語」という科目。

2021年度が間もなく終わる。コロナに始まり、未だ収束の兆しが見えないまま、2021年度が終わる。

 

実はこの2021年度、英語教育に関わる人にとっては、非常に大きな年であった(はず)。なのに、世間ではあまり大きな話題とはならなかった。世間、世論、財界に押されて始まった小学校英語の教科化、なのに...

 

妻ともよく小学校英語教科化の話をする。小学校から高校、大学まで、英語教員の中には小学校英語教科化に反対の声も少なくない。むしろ反対派の方が多いのではないかと思う。妻もその一人だ。

 

なぜか。やってもあまり効果がないことがわかっているからである。ある研究では、小学校から英語を学んでも、中学から学び始めた子供に比べて偏差値で2上回る程度、という結果が報告されている。これを大きな差と呼ぶかどうか...

また、別の研究では、小学校3年生から英語を習い始めた児童・生徒と、中学から始めた生徒の英語力の経年変化を比較したところ、中学3年次には同等の英語力になる、という報告もある。つまり、早くはじめても、中学3年生になるころにはその「貯金」を使い果たす、ということだ。例えば、中学生や高校生に英語を教えていても、「この生徒は幼稚園から英会話を習っているから、、、」なんて思ったことがないのはそういうこと。早期にはじめた子たちが、中学や高校で飛びぬけて英語の成績がいいとは決して思わない。

 

これは、私の経験的にもそうだ。かつて中学の英語教師をしていた頃、中学1年生を教えた時、小さい頃から英会話を習っている子たちと、中学になってはじめて英語に触れた子たちとの間には、かなりの差があることが明確にわかる。ところが、中学3年生頃にもなると、「あれ?幼稚園から英語習ってたのではないの?」なんて思うことは日常的となり、どの子が早期英語教育経験者で、どの子が未経験者かわからなくなる。

 

小学校で英語をするよりも、他に大事にすべき教科がたくさんある、との考えが現場の教員の間では主流かもしれない。英語の授業が週に3回増えたら、何か別の教科・科目がトータルで週に3時間減っているのだ。しかも、小学校の先生は英語の専門家でもない。大学の教職の授業で英語教育について全く学んでいない人が大勢を占める。

 

ここから本題。そんな中始まった小学校英語教育。目を疑うような現状を目の当たりにすることになった。驚きというか、ショックだった。

 

それがこの写真。3学期のまとめのテストだったようだ。成績つけないといけないから、テストも作成するだろう。個人的にはこのプリントを作成した小学校の先生を責めることはできないと思っている。なぜなら、小学校の先生も被害者だから。

とにかく、一斉にはじまった小学校英語教育が、このような状況である、ということ。同じような類の誤り(過ち?)が、おそらく多くの小学校で起きていると考えていいと思われる。

専門的に英語教育を学んだ人を送り込む予算立てもせず、ネイティブ教員を常勤で配置する予算立てもせず、個々の小学校教員に相当な負担を背負わせて、かくして小学校英語教育は始まった。

誰がいったい得をするというのか。

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小学校5年生3学期の英語まとめのテスト